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司馬遼太郎著『街道をゆく1・甲州街道

 

 

 『街道をゆく』(朝日文庫版・全43巻)、第1集「甲州街道」

 

 司馬遼太郎さんが47歳から執筆を開始した短編紀行集『街道をゆく』(朝日文庫版・全43巻)、その第1集「甲州街道」に登場する河合重子さんは甲州街道沿いの八王子市八日町目抜き通りにある老舗・履き物屋の娘さん。

 彼女が1年生の時、当時、通学していた府立第四高等女学校(後の都立南多摩高校)の学芸会で、先輩たちが演じた真山青果作「将軍江戸を去る」を観てから徳川慶喜に関心を持ち、慶喜を勉強するために東京女子大国史科に入学しました。

 

 一市民でありながら慶喜研究家としてかなりの博識を持っていたことから、後に母となってから司馬さんを甲州街道の紀行執筆に同行することになります。そして、司馬さんから「河合さんの"慶喜学"の学殖というのは、ほとんど慶喜の近辺の塵のうごく動きにさえ視線をきらきらと走らせるようで、私は最後にぼう然とする思いだった。」と言わしめています。

 毅然としながらも女性らしさが伺われる河合さんの人となりが、この書からも忍ばれます。

 

 ちなみに司馬さんは『街道をゆく』以前に、徳川慶喜を主人公にした小説『最後の将軍』を書き上げており、執筆順が逆であったならば、どんな慶喜像になっていたのでしょうか