「こころの科学」(日本評論社)に常盤正臣さんが執筆

20190608

 

 




心の科学「知的障害をもつお母さんお父さんの笑顔のために」
常盤正臣(分担執筆) (日本評論社)

常盤さん(昭和31年卒)が執筆された「こころの科学」はメンタル系サバイバルシリーズの一環として今回は「知的障害をもつお母さんお父さんの笑顔のために」として刊行されました(2019・4・20発行、定価1300円+税)。

常盤さんは「支援の立場から伝えたい」という項で「お母さんの笑顔とともにあった就労支援」をテーマに豊富な具体例を紹介しつつ問題の本質に鋭く切り込んでいます。

二人の知的障害者を抱えたお母さんは「この子らとともに死んだほうが幸せか?」と苦悩しますが、私のところに生まれてくれた宝物なのだから「二人の笑顔を絶やさぬように、私が守る」と腹をくくります。そのお母さんたちに寄り添いながら支援し続けた常盤さんたちの粘り強い活動は「母として満足しています」と言わしめる結果を生み出していきます。

さて、この本を紹介しようとしている矢先、10年以上就労していなかった51歳男によるカリタス小事件、元農林水産事務次官が無職の長男を刺殺するという痛ましい事件が起きました。二つの事件から「就労」「無職」というキーワードが私の頭の中に浮かび上がり、常盤さんが取り組んだ「就労支援」という言葉と繋がってしまいました。そんな思いが交錯し、紹介文が進まない時「こころの科学」の監修者である斎藤環氏(精神科医)のお名前を新聞記事に見つけました。そこには、最近話題の中高年のひきこもりが若年層のひきこもりを上回ったとありました。ひきこもりのきっかけの第一位は「退職」。80代の親が50代の子どもを支える「8050問題」を論じながら、手をこまねいているとやがて親が50代の子どもに代わって支払ってきた年金保険料で50代だった子どもが(総人口が減少する日本で)年金を受給する時がやってくる。孤独死の大量発生も憂慮される。人生100年時代の素晴らしき高齢社会の日本ではすぐに「9060問題」が現実になる。日本の明るい未来は描けないと警鐘を鳴らしていました。

今回、常盤さんが論じたことは「知的障害」を持つ方々への「就労支援」でしたが「8050問題」「9060問題」を考えると他人ごとではない大きな問題が「こころの科学」で論じられていると感じました。チャンスがありましたら同窓の多くの皆さんに読んでいただきたいと思い、ここに紹介させて頂きました。              
              (昭和44年卆 井上務 記)