講演者は平成23年卒の和田智竹氏(総合研究大学院大学 総合化学研究科 極地科学専攻 博士課程1年)。受講者は4年生が対象。
アイスブレイク的な自己紹介が終わると第60次南極観測隊隊員として向かった南極でのヒルガタワムシについての興味深いお話しが始まった。ヒルガタワムシは、あの想像を絶するような過酷な環境でも生きていけるというクマムシにも勝る無敵の生物であるらしい。メスだけの単為生殖で繁殖している。
写真、動画、そして熱帯で自らが採集した珍しい昆虫たちの標本(その価値を質した後輩に小さな声で答えた価格は仰天するような額であったが、その貴重な標本を持参)を駆使した講演は遠い南極の様子や熱帯ジャングルの雰囲気を臨場感溢れるものとし、後輩たちの興味を喚起した。
極地での研究内容の紹介に加え、寒いこと、紫外線が強くすぐに日焼けしてしまうこと、さらには隊員の中には調理、土木、電気技術者などが多く、これらの多くの方々の協力に支えられて初めて研究が進むことを強調。この部分の話しを聞きながら、講演者である和田氏はまだ若いのに配慮のできるなかなかの人物だ!と間もなく69歳の私は感心した。そして、わが母校の教育はどうやら成功しているようだと確信した。
和田氏は南多摩時代には陸上部で活躍していたことを語るとともに吃音に悩んで苦労していたとも語った。吃音は研究者に必要な英語習得にも不利であるかもしれないが挑戦の日々であると明るく語りつつ「苦手に挑戦してほしい」と後輩たちを激励した。南多摩時代に悩んでいたという吃音を見事に克服したことは流暢に展開された当日の講演がまさに雄弁にそれを証明して見せてくれていた。このような「人間力」に満ちた卒業生が陸続と輩出されるわが母校の未来を会場の片隅でひとり想像してみた。
|