平成29年度「先輩に学ぶ」開催

20171208

 

日時:平成29年11月29日(水)午後2時〜
会場:南多摩中等教育学校 多目的教室 
講師:前八王子市長 黒須隆一氏 (昭和35年卒業)



 中等教育学校4年生150人を前にして、「当事者・リーダーになること」をテーマに、あかね会顧問黒須隆一氏が「先輩に学ぶ」授業で熱く語りました。後期高齢者となった先輩は、「現在、ボクシングジムに週2回通い身体は頑健」と近況を語りました。

 地元の小中学校に通い、南高に進んだ黒須先輩は、兄妹4人の長男として、家業(建設業)を継ぐ運命にあり、大学では工業経営学を専攻しました。
 その一方で、若い頃からの車好きが高じて、大学卒業後レーシングドライバーとして6年間活躍し、1969年のグランプリのクラス優勝、マカオグランプリの第2位入賞など、戦績は著しいものがあります。
 32歳のとき「世のため人のために何かを尽くせ」と周囲から言われ、「これだけ言われてやらないのは男じゃない」と決意し、政治家をめざしたそうです。
33歳で八王子市議会議員になり、市議会の3期目の途中で、都議会議員選挙に推されましたが、結果は1,000票足らず落選し(浪人暮らし)、その後再度の落選で8年間の辛い日々が続きました。「本気度が足りなかった」と猛省し、背水の陣で臨んだ3回目の都議会議員選挙ではトップ当選となりました。
 その後、平成12(2000)年、前市長が5選をめざした八王子市長選挙で、対抗馬として選挙に立ち、現職に倍する69,000票を取り当選し、その後市長を3期12年務めました。その間に取り組んだ様々の施策を中等教育学校4年生に紹介し、熱く語りました。

 当時の八王子市は財政が破綻した状況で、職員に意識改革を訴え、意見交換を3年かけて3,000人を対象に行いました。経営者として株ェ王子市の実現、コスト、スピード、経営感覚の大切さを訴えました。
 最初の4年間は職員採用を1人も行わず、「入るを量って出ずるを制す」を徹底した結果、平成18年には、行政改革(民間のシンクタンクによる組織運営の在り方)で全国第1位となりました。市長として日頃から訴えたことは、「あいさつから始めよう」を実践し、政治信条は「夢と説得力」でした。
 他所でやっていないことを進める「オンリーワンのまちづくり」も進めました。@不登校児童・生徒を対象にした学校づくり・高尾山学園の設立、A東京で初めての「道の駅八王子滝山」の開所、Bごみ収集の有料化、C捨て看板防止条例 などの施策です。
 新しいことを試みても、1年か2年で変わってしまう、常に進化を遂げないといけないと力説し、行政や成果の「見える化」が大事であり、市民が喜び、職員が充実感を感じることが必要と説きました。
 やがてリーダーとなる生徒に対しては、八王子市長として「決断と責任」「ぶれない」ことを実践してきたこと、組織の皆の信頼を得ることの大切さを説きました。実践例として、東日本大震災の際の義捐金募集1億円を決断し、自ら朝夕駅頭に立って、目標の1億円は2週間で達成したこと(最終的に4億3千万円。全国自治体で第1位)の報告がありました。
   失敗から何を学ぶか。挑戦する心をもち、眠れる才能を発掘して、目標を大きくもつことだとし、ホンダの創業者・本田宗一郎氏の言葉である「人生は見たり、聞いたり、試したりだが、最近は試すことをしない人が多くなった」という言葉を引き合いに、「失敗を恐れて何もしない人が増えて残念」と語りました。
 最後に生徒に、先輩の好きな言葉であるレイモンド・チャンドラーの言葉の紹介がありました。
 「強くなければ、生きていけない。
 優しくなければ、生きる資格はない」と。
 
 質疑応答では、@姿勢が前向きだが失敗体験はなかったのか、A高校生として今なすべきことは何か、B前例がないなど、失敗を恐れずに一歩を踏み出すことのキッカケは何か、など鋭い質問があり、生徒代表からは、「生きていくうえで大事なことを学んだ、肝に銘じ生きていきたい」と謝辞が述べられました。



 
会場の様子


講演をする黒須氏