大塚光代さん(昭和30年卒)歌集「葉月」出版

20120410

 

 

 

 

歌集「葉月」の表紙

 大塚光代さん(昭和30年卒)が詠んだ素敵な656首が収められた歌集「葉月」(短歌新聞社発行)をご紹介いたします。

 「先輩は実に素敵な人生を送っていらっしゃるんだなぁ〜」が私の読後感です。

HP上の小さな紙幅です、綺羅星のようなお歌の中のほんの幾首かだけですがご紹介してみたいと思います。
 

孫書きし賀状届きぬ正月の炬燵に夫とくり返し読む
盆栽の大事の枝を折られしと夫の嘆かふ昨夜の大雪
死にたるを胸に抱きて泣ける子に鸚鵡飼ひしを悔やみてをりぬ
豆を煮る香り厨に満ちみてり味噌を作れる立春の午後
逢わせたき少女(おとめ)ありとてこの夕べ誘ひ帰ると子は出勤す
 

訪いくれし少女のびやかに育つらし明るき笑顔の爽やかなりき
お手伝い又してあげると帰りゆく子守をせしはわれと思ふに
シクラメンの俯く蕾を折りし子は「上を向かせてあげたかった」と
さ庭べに女孫生まれしを祝ふとて白き花咲く大手毬植うる
誕生日おめでたうと受話器より幼の声聞こえくる朝
 

こそこそとわが首筋へ猫じゃらし擦れり背なの孫のいたづら
大事げにそつと広ぐる手の中に団子虫ひとつ丸まりており
いくさ火を恐れをののき逃げまどひし幼子我や還暦となる
もえさかる戦火を逃れし子もこの夏古稀となりにけるはや
華やけき赤き振袖に色直す姪に歌ひやる花嫁人形のうた

ダーリアの咲く夏くれば想い出づ盲腸病みし少女の頃を
はにかみてダリアを抱へ入院の吾を見舞ひくれし少年ありき
我が生きの証となりたる歌の道詠めど学べど果てなかるべし
 

 大塚先輩が師と仰ぐ方が寄せられた序文には、常笑みを忘れぬ君の明るさはめぐりの人にもしあわせを呼ぶとありました。

私も沢山の「しあわせ」を頂戴いたしました。 (44年卒 井上務)