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元教師田渕佐智子先生短歌集「鎮魂」(短歌新聞社発行) |
20120610 |
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歌集「鎮魂」の表紙
田渕佐智子先生 |
著者は昭和19年11月、太平洋戦争の真っ只中、日本の敗色の色濃くなってきた頃、都立第四稿等女学校に赴任(下線部分は記念誌「湧水万古」137ページより引用)された田渕佐智子先生です。記念誌「湧水万古」の引用をもう少し続けます。「全校生徒への紹介の後、担任の四年竹組の教室に行ってみて驚いたことには、教室は勉強する状態ではなく(中略)学校工場として戦車の部品を扱っていたのでした」とあります。 幼子をひしと抱きて守りつつ悲母観音となりたる母よ 歌集「鎮魂」の意味が重く心に残ります。 長き我が教師生活の最後なる担任生徒の巣立つ日近し 家族を一瞬にして失った先生にやがて新たな家族が生まれました。 曽祖母の生まれ代わりかみどり児は八月六日午前九時に生まる こんな一面も ラケットを持ちて出かける我を見て「青春してる」と言う人のあり 田渕先生は「あとがき」で「少しでも亡くなった母や弟妹達が安らかに眠ってほしいとの願いをこめて纏めてみました」と。跋文を寄せられた須藤若江様は「作者は迷うことなく歌集名を『鎮魂』とした、たましずめ『鎮魂』はこの一巻を通しての主題である」さらに「年毎にめぐり来る原爆忌を作者は詠い続けて来た」と綴られました。 (写真提供:31年卒染谷英夫様) |